「私、失敗しないので。」——あの決めゼリフとともに、大門未知子が颯爽と羽織る白衣。実はあの1着が、秋田県大仙市の工場で作られていることをご存じでしょうか。
大曲の花火で知られるこの町に、医療用白衣で国内シェア60%超を誇るナガイレーベンの生産拠点があります。スクラブ1着に必要なパーツは17。1日に裁断される生地は1万枚。手術着が白ではなく緑や青である理由には、「補色残像」という科学的な秘密が隠されている——。NHK「探検ファクトリー」で中川家とすっちーが潜入したその現場は、驚きの連続でした。
パリコレ経験を持つデザイナーが月1回病院に通い、脇の縫い目をわずか数ミリずらすだけで「腕が上がりやすくなる」白衣を生み出す。歯科医師用にはポケットをあえて背面に配置する。そんな知られざる工夫の数々を、番組の内容をもとにたっぷりとお伝えしていきます。

米倉涼子さんが決め決めファッションの上に白衣をまとっている姿は
ホントかっこいいんだよね!あの白衣がここで作られてるんだ!
読み終わるころには、病院で白衣を見かけたときの目が、きっと少しだけ変わっているはずです。
番組概要|NHK「探検ファクトリー」がナガイ白衣工業に潜入!
「探検ファクトリー」は、漫才コンビの中川家(礼二・剛)とすっちーが日本各地の工場を訪ねる、NHK総合の社会見学バラエティーです。普段は見られない製造現場の裏側を、笑いを交えながら紹介してくれる人気番組で、初回放送は2024年6月22日(土)でした(2025年10月31日に再放送)。
今回の訪問先は、秋田県大仙市にあるナガイ白衣工業株式会社。大仙市といえば「大曲の花火」で有名ですが、実は医療用白衣の一大生産拠点でもあります。花火の町から全国の病院へ、毎日たくさんの白衣が届けられているなんて、ちょっと意外で素敵ですよね。
ナガイレーベンとは?医療用白衣で国内シェア60%超の実力
東証上場の白衣トップメーカー・ナガイレーベングループの全体像
ナガイレーベン 会社概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | ナガイレーベン株式会社(Nagaileben Co., Ltd.) |
| 創業 | 1915年(大正4年) |
| 設立 | 1950年7月20日(昭和25年) |
| 代表取締役社長 | 澤登 一郎 |
| 本社所在地 | 〒101-0044 東京都千代田区鍛冶町2丁目1番10号 |
| 資本金 | 19億2,527万円 |
| 従業員数 | 単体130人/グループ501人(2025年8月31日現在) |
| 事業内容 | メディカルウエア・介護ウエア等の企画・製造・販売、病院用靴・靴下の販売 |
| 国内シェア | メディカルウエア市場で 60%超(国内トップシェア) |
| 供給実績 | 年間 600万着以上(医療・介護従事者 約370万人に提供) |
| 主な拠点 | 国内8支店(北海道・東北・名古屋・大阪・広島・高松・福岡)+海外2支店(台北・ソウル) |
| 関連会社 | ナガイ白衣工業株式会社(秋田県・生産拠点) |
| 公式サイト | https://www.nagaileben.co.jp/ |
ナガイ白衣工業の親会社であるナガイレーベン株式会社は、東京証券取引所に上場している医療用白衣のトップメーカーです。医療白衣のコア市場では国内シェア60%超を誇り、まさにこの分野のリーディングカンパニーといえます。白衣だけでなく、患者ウェアや手術ウェア、病院用の靴なども幅広く手がけています。
秋田県大仙市に集結する生産拠点|年間600万着を支える工場群
ナガイ白衣工業は、1969年(昭和44年)に秋田県の誘致工場として設立されました。現在は大仙市内にカッティングセンター、ソーイングセンター、南外工場を構え、さらに仙北郡美郷町のホワイトエース、国内の協力工場、海外(インドネシア・中国・ベトナム)の提携工場と合わせて、年間約600万着もの白衣を生産しています。日本の病院で使われている白衣の半数以上がここから届けられていると聞くと、そのスケールの大きさに驚かされます。
「ドクターX」の白衣もここで作られていた!ドラマ衣装提供の実績
ナガイレーベンは数多くのテレビドラマや映画に衣装提供を行っていることでも知られています。中でも注目なのが、米倉涼子さん主演の「ドクターX~外科医・大門未知子~」シリーズです。
大門未知子が着用している白衣は、ナガイレーベンの「KEX-5130」(女子シングル診察衣)。2024年12月公開の「劇場版 Doctor-X FINAL」でも、この「KEX-5130 ホワイト」をはじめ、手術着の「ES-8662」(ピーコックグリーン)などが使用されました。
ほかにも「TOKYO MER」「アンメット」「マウンテンドクター」「グレイトギフト」「となりのナースエイド」など、近年の医療ドラマの多くでナガイレーベンの白衣が採用されています。ドラマのワンシーンで見かける白衣が、実は秋田の工場から届いていると思うと、なんだか親近感がわきますよね。
白衣の歴史は”時代の鏡”|明治のエプロンからファッション白衣へ
ツイッギー来日でミニ丈に!流行とともに変化した看護衣
番組では白衣の歴史が紹介されました。明治初期の看護衣は、当時の風俗を反映したエプロンのような形だったそうです。戦後に保健衛生法が制定されると、昭和31年に国が正式に認めたデザインの看護衣が登場します。
その後、昭和46年にファッションモデルのツイッギーが来日すると、日本中でミニスカートブームが到来。その影響は白衣にも及び、看護衣の丈がぐっと短くなりました。制服であっても時代のファッションを映し出すところが面白いですよね。
パンタロンブームが生んだパンツスタイル白衣と女性の社会進出
昭和49年になるとパンタロンが流行し、女性の社会進出が進む中で、看護衣にもパンツスタイルが取り入れられました。スカートからパンツへという変化は、単なる流行ではなく、「動きやすく、働きやすい服を」という現場の声の反映でもあったのだと思います。白衣の変遷をたどると、そのまま日本社会の歩みが見えてくるようで、とても興味深い内容でした。

「パンタロン」って、今の人にわかるかな?ズボンのすそがラッパみたいに広がっているんだよ!
最先端工場の裏側を公開!CAD/CAMで1日1万枚を裁断する技術力
100種類以上の生地を常備|撥水・制菌・制電など多機能素材の秘密
ナガイ白衣工業の工場には、100種類以上の生地が常備されています。手術用ガウンに使われる血液が落ちやすい撥水加工素材、感染対策に対応した制菌加工素材、静電気を防ぐ制電素材など、用途に応じて高機能な生地が使い分けられています。見た目はあまり変わらなくても、素材の中身は驚くほど進化しているのです。
スクラブ1着=17パーツ|生地のムダを極限まで減らすパターン設計
番組で驚いたのが、スクラブ1着を作るのに17ものパーツが必要だということ。1枚の生地からはわずか2着分しか取れないそうですが、CAD(コンピュータ支援設計)で精密にパターンを設計することで、生地のムダを極限まで減らしています。カッティングセンターでは、エアーテーブルの上に生地を数十枚重ねて延反し、CAM(自動裁断機)でわずかな狂いもなく一気に裁断。1日1万枚をカッティングする体制が整っています。
「スクラブ(Scrub)」は英語の「ゴシゴシ洗う」に由来する名前で、ハードな洗濯にも耐えられる丈夫さが特徴の医療用ウェアです。従来の白衣に代わり、現在では多くの医療現場で主流のユニフォームとなっています。

「スクラブ」は、医師・看護師・歯科医師などの医療従事者が着用している半袖のVネックのウェアだそうです。
約200台のミシンと熟練の手仕事|イートンシステムによる完全分業縫製
縫製工程では、約200台のミシンがずらりと並ぶ光景が圧巻です。ナガイ白衣工業では「イートンシステム」と呼ばれる近代化された縫製方式を導入しています。これは、製品をパーツごとに分解して完全分業で縫い上げる仕組みで、品質の均一化と生産効率の向上を両立させています。最先端のシステムと熟練の手仕事が組み合わさることで、年間600万着という膨大な数を安定した品質で送り出すことができるのですね。
パリコレ経験のデザイナーが語る”動ける白衣”のこだわり
月1回の病院訪問で現場の声を収集|脇の縫い目をずらすだけで腕が上がる
番組に登場したデザイナーの渡井さんは、かつてパリコレに参加するアパレルブランドでデザインを手がけていた方です。渡井さんは月に1度、実際に病院を訪問して医師や看護師の動きを観察し、白衣の改良に生かしています。
たとえば「腕を上げると突っ張る」という声には、脇の縫い目の位置をほんの少しずらすことで対応。わずかな修正が動きやすさを大きく変えるのだそうです。アパレルの世界では自分のデザインした服を着ている人を街で見かける機会が少なかったけれど、医療用白衣は全国の病院で実際に使われているのが見える、それがやりがいだと語っていたのが印象的でした。
歯科医師には背面ポケット|職種ごとに異なる細やかな設計思想
渡井さんのデザインには、職種ごとの工夫が随所に盛り込まれています。たとえば歯科医師用の白衣では、前かがみになったときに胸ポケットの中身が患者の顔に当たらないよう、ポケットを背面に配置するという設計がなされています。「誰のために、どんな場面で着るのか」を徹底的に考える姿勢が、ナガイレーベンの白衣が選ばれ続ける理由のひとつなのだと感じました。
手術着が「白」じゃない理由|補色残像の科学
手術室のシーンをドラマなどで見ると、お医者さんが着ているのは白ではなく、緑や青のガウンですよね。これには「補色残像」という科学的な理由があります。
人間の目は、赤い色を長時間見続けると視覚が疲労し、視線をそらしたときに赤の補色である青緑色の「残像」が見えてしまいます。手術中は血液の赤色を長時間見続けるため、白い壁や白い手術着の上に青緑の影が映って見え、正確な判断の妨げになることがあるのです。手術着を緑や青にすることで、この残像現象を軽減し、医師の集中力を保つ効果が期待できます。

白衣の色ひとつにこれほどの科学的根拠があるとは、番組を見るまで知りませんでした!
白衣は”医療をデザインする”時代へ|カラーバリエーションと患者心理
最近の医療現場では、白だけでなく、ピンクやライトブルー、ラベンダー、ネイビーなど、さまざまな色の白衣が使われるようになっています。ナガイレーベンの衣装提供リストを見ても、ドラマごとに実に多彩なカラーが採用されていることがわかります。

色の選択には、患者さんの心理的な負担を和らげるという意図も込められています。たとえば柔らかなピンクは安心感を、ライトブルーは清潔感と落ち着きを与えるとされています。同時に、医療従事者自身が「自分が着たい」と思えるデザインやカラーであることが、日々のモチベーション向上にもつながります。白衣はもはや単なる作業着ではなく、「医療現場の印象をデザインする存在」へと変わりつつあるのです。
まとめ|大仙市から全国の病院へ届く”着る技術”のものづくり
秋田県大仙市のナガイ白衣工業から、全国の医療現場へ届けられる白衣たち。その1着1着には、想像をはるかに超える技術と想いが詰まっていました。
CADで設計された17パーツの精密なパターン、1日1万枚を裁断するCAMの切れ味、約200台のミシンが並ぶイートンシステムの縫製ライン——最先端の生産技術が、年間600万着という途方もない数を安定した品質で支えています。それでいて、撥水・制菌・制電といった100種類以上の高機能素材を使い分け、「腕が上がりにくい」という現場の声には脇の縫い目をわずか数ミリずらすことで応える。パリコレ経験を持つデザイナーが月1回病院に通い、職種ごとの動きを観察して形にしていく——そこにあるのは、大量生産の効率性と、一人ひとりの働き方に寄り添う繊細さの両立です。
手術着が緑や青である理由は「補色残像」の科学に基づいていること、カラーバリエーションの広がりが患者さんの心理的負担を和らげる役割を果たしていること、そしてミニ丈からパンツスタイルへと変遷してきた白衣の歴史が日本社会の歩みそのものを映し出していること——番組を通じて見えてきたのは、白衣が単なる作業着ではなく、医療の質そのものに関わる存在だということでした。
動きやすさ、清潔さ、色の工夫、職種ごとの細やかな設計はまさに「みんなに優しいユニフォーム」ですね。そのすべては医療従事者のストレスを減らすためにあり、それが巡り巡って患者さんの安心へとつながっていく。白衣は、着る人と向き合う人の間をつなぐ「やさしさのかたち」なのだと思います。
「ドクターX」の大門未知子が颯爽と着こなす白衣も、「TOKYO MER」のチームが駆け回るスクラブも、そしてあなたの近所の病院で看護師さんが着ている1着も、この大仙市の工場から届いているかもしれません。次に病院を訪れたとき、白衣を見る目が少しだけ変わっている——そんなきっかけになれたなら嬉しいです。



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