わが家には、愛犬のチワワがいます。ソファから飛び降りるだけでヒヤッとすることがあります。この子の足腰が弱ってきたらどうしよう、いつか事故や病気で歩けなくなったら――と、飼い主なら誰でも一度は不安になったことがあるのではないでしょうか。
犬は言葉で「痛い」「歩きづらい」と伝えてくれません。だからこそ、もし愛犬が足を失ったり、うまく歩けなくなったりしたとき、どんな選択肢があるのかを知っておくことは、飼い主にできる大切な備えのひとつだと思います。
その選択肢のひとつが「義足」であり、それを支えているのが動物の義肢装具士という専門職です。この記事では、動物の義肢装具士とはどんな仕事なのか、日本のパイオニアである島田旭緒(しまだ あきお)さんの取り組みと経歴、そして飼い主がいちばん気になる犬の義足の値段まで、公的な情報や本人インタビューをもとにわかりやすくまとめました。愛犬の「もう一度歩きたい」に寄り添うヒントになればうれしいです。
なお、島田さんは日本テレビ「オー!マイゴッド!私だけの神様、教えます」に登場し、その仕事ぶりが「動物義肢装具士の神」として紹介されています。番組をきっかけに関心を持った方にも役立つ内容にしています。
動物(ペット)の義肢装具士とは?
動物の義肢装具士とは、事故や病気で手足を失ったり、身体の機能に障がいを負ったりした動物のために、義足(義肢)やコルセット・装具をつくる専門家です。もともと人間の医療で発展してきた義肢装具の技術を、動物の身体に応用してつくるのが特徴です。
ここで大切な注意点があります。「義肢装具士」は人間を対象とした国家資格ですが、「動物の義肢装具士」という国家資格は、日本には存在しません。島田さんも人間の義肢装具士としての国家資格を持ち、その知識と技術を動物に応用する形で活動しています。つまり動物の義肢装具は、獣医師と義肢装具士が連携してはじめて成り立つ、専門性の高い分野なのです。
義足・装具・車椅子は何が違う?
「義足」と一口に言っても、犬の足の問題に対応する道具にはいくつか種類があり、役割が異なります。混同しやすいので、まずは違いを整理しておきましょう。
| 種類 | 役割 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 義足(義肢) | 失った足の一部を人工的に補い、その義足に体重をかけて歩けるようにする | 断脚手術後、先天的な足の欠損など |
| 装具(コルセット・カラーなど) | 関節や背骨を支え、固定して痛みや不安定さを減らす | 椎間板ヘルニア、膝蓋骨脱臼、関節炎など |
| 車椅子(歩行補助車) | 残っている足と車輪で移動を助ける | 後ろ足の麻痺、強い筋力低下など |
義足は「足そのものを補う」もの、装具は「関節を支える」もの、車椅子は「移動を助ける」ものと考えるとわかりやすいです。どれが適しているかは、病気やケガの内容によって変わります。
人間用の義足とはどう違う?
人間の義足は二本足で歩くことを前提に設計されています。一方、犬は四本足で歩くため、体重のかかり方や動き方がまったく異なります。そのため犬用の義足は、前足と後ろ足のバランスや背骨への負担まで考えながらつくる必要があります。さらに、皮膚トラブルが起きにくい形状、脱げにくさ、そして飼い主が毎日つけ外ししやすい構造など、動物ならではの工夫が求められます。

島田さんが義肢を作る過程は、石膏で型を取るところからすべて手作りで、優しさと情熱があふれた想いが詰まっています。
動物の義肢装具士・島田旭緒さんの経歴とプロフィール
日本で動物の義肢装具という分野を切り拓いてきたのが、東洋装具医療器具製作所(東京都町田市)の代表・島田旭緒さんです。まずは基本のプロフィールを表にまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 氏名 | 島田 旭緒(しまだ あきお) |
| 年齢 | 1980年生まれ、46歳(2026年時点) |
| 屋号 | 東洋装具医療器具製作所(2007年創業) |
| 学歴・資格 | 早稲田医療専門学校 義肢装具学科卒業/人間の義肢装具士の国家資格を保有 |
| 経歴 | 共立義肢、エニーで人間用の義肢装具・医療機器に従事後、動物専門へ |
| 実績 | 年間約3,000例の義肢装具を製作。救ってきた動物は5万頭以上とされる |
| 対応動物 | 犬・猫からペンギンまで幅広く対応 |
出典は東洋装具の公式サイト(会社案内)、あいち犬猫医療センターの担当者紹介、日本テレビ「オー!マイゴッド!」公式情報などです。
きっかけは学生時代の卒業論文
島田さんが動物の義肢装具に関心を持ったのは、義肢装具士の資格を取るために通っていた専門学校時代でした。卒業論文のテーマを探すなかで、動物の義肢装具がどのように扱われているのかに興味を持ちます。しかし当時は「義肢装具を動物に?」という反応が大半で、人間についての研究すら足りない状況だったため、動物は研究対象外と言われるほどでした。それでも学科長が変わったことでゴーサインが出て、研究をスタートさせたそうです。
調査の結果、当時は日本にもアメリカにも動物専門の義肢装具はほとんど存在せず、あるのは車椅子や簡易サポーター、簡単な添え木くらいだったといいます。
二つ目のきっかけは、先輩の愛犬チワワの骨折
進路を決定づけたのは、人間の義肢装具会社で働き始めて1年ほど経った頃の出来事でした。会社の先輩が飼っていたチワワが背骨を折る大怪我をし、治療した動物病院で、獣医師が手作りしたコルセット(小さな座布団のようなものに脚を通す穴をあけ、マジックテープでとめる仕組み)を身につけて戻ってきたのです。それを見た島田さんは「やっぱり動物にもコルセットが要るんだ」と確信します。
同じチワワを飼う身としては、このエピソードには胸を打たれます。小さな身体の一頭の犬の骨折が、日本の動物医療に新しい選択肢を生むきっかけになったのですから。
その後、島田さんはボランティアで装具を製作しながら研究を続け、紹介された動物病院で3年間にわたり研鑽を積みました。人間の会社で働きながら、睡眠時間を削って複数の動物病院で学び、2007年6月、日本初の動物専門義肢装具製作所である東洋装具医療器具製作所を立ち上げます。けれども、はじめは全く売れなかったそうです。一方で、ネットでは格安に個体差を無視した義肢が売れられていることに疑問を持っていました。
「早く、多くの動物に届けたい」という想い
島田さんが目指しているのは、装具を「簡単に、早く」動物に届けることです。独自の注文書とマニュアルを作り、寸法の計測を獣医師に任せられる仕組みにすることで、時間とコストを軽減し、少しでも多くの動物を助けようとしています。この姿勢は、日本テレビ「My Turning Point」でも紹介されました。
テレビ・メディア出演歴
島田さんの活動は、数多くのメディアで取り上げられてきました。主なものを挙げます。
| 番組・媒体 | 内容 |
|---|---|
| 日本テレビ「オー!マイゴッド!私だけの神様、教えます」 | 「動物義肢装具士の神」として仕事現場に密着 |
| 日本テレビ「news every.」 | 動物専門の義肢装具士に密着 |
| フジテレビ「めざまし8」 | EXITが取材 |
| 日本テレビ「My Turning Point」 | 「変えたいミライ」を語る |
| NHK WORLD-JAPAN「RISING」 | 障害のある動物によりそう義肢装具士として紹介 |
| BS朝日「ネコいぬワイドショー」「Fresh Faces」 | 日本初の動物専門義肢装具士として特集 |

島田さんは、完成した義肢でワンちゃんが歩けるか、装着する瞬間がとても緊張するそうです。島田さんに義肢をつけてもらってワンちゃんが嬉しくて走りだしたのを見て、飼い主さんから涙がみえた時は、感動してしまいました。
島田旭緒さんが「オー!マイゴッド!私だけの神様、教えます」に登場
島田さんは、日本テレビ「オー!マイゴッド!私だけの神様、教えます」(毎週土曜あさ10:30〜11:25/MC:ヒロミさん、小泉孝太郎さん)に登場します。番組公式によると、8月1日(土)放送回で「【日本初】動物義肢装具士の神」として紹介され、その仕事現場に密着する内容です。
番組の予告では、事故で脚を失った犬が島田さんの義足で走れるようになった例などが取り上げられ、「一頭でも多くの動物を救いたい」という想いのもと、寝る間も惜しんで義足を作り続ける姿が伝えられています。番組では、これまでに救ってきた動物は5万頭以上と紹介されています。
見逃してしまった方は、日本テレビの見逃し配信サービス「TVer」などで配信されることがあるので、番組公式サイトを確認してみてください。
犬が義足を使うのはどんなとき?
犬に義足が検討されるのは、主に次のようなケースです。
| ケース | 具体例 |
|---|---|
| 足を切断した場合(断脚手術後) | 交通事故、悪性腫瘍(がん)などで足を残せないと判断されたとき |
| 先天的に足が欠損している場合 | 生まれつき前足・後ろ足の一部が短い、欠けているなど |
| 神経・筋力の問題 | 老齢による筋力低下、ナックリングなどの神経疾患 |
足を切断すると、残った3本の足にかかる負担が大きくなります。義足で体重を4本に分散させることで、より自然な歩き方に近づけ、関節炎や腰痛といった二次的なトラブルを防ぐことも大切な目的です。
前足と後ろ足で義足はどう違う?
犬の体重は前足に約6割、後ろ足に約4割かかると言われ、前足と後ろ足では負担のかかり方が異なります。前足の義足は体重を支える役割が大きく、後ろ足の義足は蹴り出しや歩幅に関わります。いずれの場合も、残っている足の長さ(切断位置)が義足のつけやすさや効果を左右するため、断脚手術の前から義足を前提に相談しておくと、義足をつけやすい形で足を残せる場合があります。

いつどんなきっかけで義足が必要になるかわからないけれど、義足をつける選択もあることを知っておくだけでも、いざという時に役立つかも。
犬の義足の値段はいくら?費用相場は?
飼い主がいちばん気になるのが費用でしょう。ここで正直にお伝えしておきたいのは、犬の義足は一頭ごとのオーダーメイドが基本のため、「いくらです」と一律には言えないという点です。東洋装具をはじめ、製作所の公式サイトにも一律の料金は明記されていません。あくまで第三者の情報も含めた一般的な目安として、次の相場が紹介されています。
| 費用の種類 | 目安(一般的な相場・一例) |
|---|---|
| 義足の製作費用 | おおよそ10万〜15万円程度(素材やオプションで20万円を超えることも) |
| 動物病院の診療料 | 病院により異なる(ある病院の例では初診8,000円・再診4,000円※税別) |
| メンテナンス・修理費 | ある業者の例で1回1,000〜2,000円程度 |
上の金額は、あくまで公開情報にもとづく一例・目安です。犬の体重、切断部位、素材、通院回数によって大きく変わるため、正確な費用は必ず製作所や動物病院で確認をしてください。
ペット保険は使える?
義足や装具の費用は、加入しているペット保険の内容によって扱いが異なります。多くの一般的な保険では対象外のことが多い一方で、車椅子や装具の費用をカバーする特約が用意されている保険もあります。加入前・利用前に、義肢装具が補償対象かどうかを必ず確認しておくと安心です。一般的には、製作所で全額を支払ったあとに保険会社へ申請し、診断書などを提出して返金を受ける流れになります。

保険って、入るときは気を付けて見るけど、あらためてどんな内容だったかは時々確認しておかないとですね。
信頼できる動物の義肢装具士・製作所の選び方
大切な家族の身体に使うものだからこそ、製作所選びは慎重にしたいところです。確認したいポイントを整理します。
| チェックポイント | 見るべきこと |
|---|---|
| 専門性・実績 | 動物専門の義肢装具の経験や症例数が豊富か |
| 獣医師との連携 | かかりつけの獣医師と連携して製作・フォローできるか |
| カウンセリング | 不安や疑問に丁寧に答えてくれるか |
| アフターサポート | 装着後の調整・修理・作り直しに対応してくれるか |
| 費用の透明性 | 見積もりや追加費用の説明が明確か |
最初の一歩としては、まずかかりつけの獣医師に相談することです。義足や装具は獣医師の処方・計測をもとに製作されるため、獣医師を通じて信頼できる製作所につないでもらうのが安心で確実な流れです。
まとめ|島田さんは「動物の義足やさん」
わが家のチワワを見ていると、四本の足で元気に駆けまわる姿こそが、この子の幸せそのものだと感じます。だからこそ、もしその足に何かあったとき、「もう歩けない」であきらめるのではなく、「もう一度歩けるかもしれない」という選択肢があることを知っておきたいと思うのです。
島田旭緒さんの歩みは、一頭のチワワの骨折から始まりました。動物の義肢装具という道がまだ誰にも切り拓かれていなかった時代に、「動物にもコルセットが要るんだ」という気づきを信じて進み続けた結果、いまでは多くの動物とその家族に希望を届けています。
愛犬の足腰に不安を感じたら、あるいは断脚という難しい決断を前にしたら、どうか一人で抱え込まず、まずはかかりつけの獣医師に相談してみてください。義足や装具は、決して当たり前の治療ではないかもしれません。けれど、その小さな選択肢が、愛犬とあなたの毎日の散歩を、もう一度取り戻してくれるかもしれないのですから。

島田さんが信じて進んだ道がこうして、犬などの動物たちの歩く当たり前をかなえてくれるのは、島田さん含め関わっているすべての人に感謝ですね。


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