2026年6月10日放送のテレビ東京「アンパラレルド〜ニッポン発、世界へ〜」で、すごく面白い会社が紹介されていました。AI防犯カメラを作っている「アジラ」という会社です。防犯カメラって「ついてるだけで安心」と思っていたんですが、実はそうじゃなかったんです。今回はこの放送内容をもとに、私なりに調べたことも加えてまとめてみました!
AI企業・アジラとは?【テレビ東京「アンパラレルド」】
「アンパラレルド〜ニッポン発、世界へ〜」は、オードリーの若林正恭さんがMCを務めるテレビ東京の経済番組です。毎週水曜よる11時6分から放送されていて、独自の技術やアイデアで社会課題に挑む日本発の企業や起業家を特集しています。番組タイトルの「アンパラレルド」は”比類なきもの”という意味で、まさにその名にふさわしい挑戦者たちが毎回登場します。
6月10日の放送で取り上げられたのが、株式会社アジラです。アジラは2015年に設立されたスタートアップで、日本人とベトナム人のメンバーが共同で立ち上げた会社です。創業者の木村大介さんは、NTTグループやぐるなびで研究開発やシステム統括に携わった経験を持ち、2015年にベトナム・ハノイの仲間たちとともにアジラを設立しました。
アジラが提供しているのは「AI Security asilla(エーアイ セキュリティ アシラ)」というAI警備システムです。公式サイトによると、導入施設は200を超えており、既存の防犯カメラをそのままAI化できるという手軽さが支持されています。

「防犯カメラのスタートアップ」って何だろう?って感じですが、従来の防犯カメラとの違いが大いにありそうです。「え、今までのカメラってそういうものだったの!?」となりそうです。
警備業界が直面する深刻な人手不足
今、日本の警備業界は、深刻な人手不足です。
厚生労働省の「職業安定業務統計」によると、警備業を含む「保安職」の有効求人倍率は長年にわたって高い水準が続いています。2026年1月時点では6.59倍で、全業界平均の1.18倍と比べるとおよそ5倍以上です。つまり、警備員1人に対して約6〜7件の求人がある計算で、どこの現場も人が足りていない状態が慢性化しています。
現場では高齢化も進んでおり、報道によると警備員の半数が60歳以上という状況です。立ちっぱなしの長時間勤務に加え、賃金も決して高くないため、若い人材がなかなか集まりません。人手不足が原因で倒産に追い込まれる警備会社も出てきています。
こうした業界全体の危機的状況が、アジラの技術が求められている背景にあります。

スーパーやマンションの前に立っている警備員さんを見かけるけど、結構なお年を召した方が立ってるので大変だなぁって思います。
従来の防犯カメラが抱える本質的な限界
ここからが、私が一番驚いた話です。
皆さんは「防犯カメラがあれば安心」と思っていませんか? 私もそう思っていました。でも実は、従来の防犯カメラには大きな限界があります。
従来の防犯カメラは基本的に「録画するだけの装置」です。映像を記録することはできますが、カメラ自体に「何が起きているかを判断する力」はありません。異常に気づけるかどうかは、モニターの前に座っている人間の目と集中力に完全に頼っています。
大規模な施設では数十台〜数百台のカメラが設置されていることも珍しくありませんが、それを少人数で監視しているのが実態です。アジラCEOの尾上剛さんも取材の中で「従来の防犯カメラでは、何かあった後に人が見返すという対応にならざるを得ない」と語っています。
つまり、多くの防犯カメラは「事件が起きた後に証拠として映像を見返す」ためのもので、リアルタイムに犯罪や事故を防ぐ力はほとんどないのです。
この違いを表で整理してみましょう。
| 役割・性質 | 従来の防犯カメラ | アジラのAI防犯カメラ |
|---|---|---|
| 基本の役割 | 映像を録画・保存する | 映像をリアルタイムで解析する |
| 異常の発見 | 人間がモニターを見て判断 | AIが骨格の動きから自動検知 |
| 通知のタイミング | 事件後に録画を見返して確認 | 異常発生時に即座にアラート通知 |
| カメラの性質 | 「記録する装置」 | 「異常を検知する装置」 |
| 人手の必要性 | 常時モニター監視が必要 | AIが24時間365日自動でモニタリング |

今の防犯カメラって、なにか事件事故が起こってから検証に使われる感じですもんね。
アジラのAI防犯カメラは何が違うのか?「姿勢推定AI」の仕組み
では、アジラの技術は具体的に何が違うのでしょうか。
アジラの強みは「姿勢推定AI」と「行動認識AI」という独自技術にあります。これは、防犯カメラの映像から人間の骨格や関節の動きをリアルタイムで読み取り、その動きのパターンを解析する技術です。
たとえば、ケンカや暴力行為が発生したとき、人間の体の動きには特有のパターンがあります。転倒したとき、不審にうろうろしているとき、それぞれの動きには特徴があります。アジラのAIはこうした動きの違いを瞬時に見分けて、異常だと判断した場合にはわずか数秒でアラートを発します。
ここでポイントなのは、アジラのAIが「人間の骨格・関節の動き」を見ているという点です。単純に映像の中の「モノの形」を認識するのではなく、人の体がどう動いているかを分析しています。そのため、たとえば太陽光発電施設のような屋外環境で動物がカメラに映り込んでも、人間と動物を正確に区別できます。アジラCEOの尾上さんは「一般的なセンサーは熱に反応するので人も動物も全て反応してしまうが、アジラのシステムなら暗闘の中でも人間だけを検知できる」と説明しています。
さらに注目すべきは、既存の防犯カメラをそのまま使えるという点です。カメラがIPカメラ(ネットワーク対応カメラ)であれば、アジラのサーバーを接続するだけでAI化できます。カメラの買い替えが不要なので、初期コストを抑えて導入できる仕組みになっています。アジラの公式情報によると、サーバー1台で最大50台のカメラ映像を同時に処理できるとのことです。
導入実績も着実に広がっています。2026年4月には渋谷スクランブルスクエアへの正式導入が発表されました。東急セキュリティとの連携によるもので、施設内での転倒、暴力行為、長時間の滞留や座り込みなどをAIがリアルタイムに検知し、現場の警備員へ即座に通知する体制が整えられています。そのほか、京急線の屛風浦駅や小田急線の一部の駅にも導入されており、駅構内でのトラブル検知に加え、白杖や車いすのお客さんを検知して駅員に通知するという使い方もされています。

白杖の検知って、傘との見分けが難しくて他社も苦戦していたそうなんです。でもアジラは「白杖を持つ手の動き」まで含めて解析することで精度を上げたんだだって。「モノの形」ではなく「人の動き」を見ているからこそできる技だなと感動しました。
異色の経歴を持つ二人のキーパーソン
アジラを率いる二人のキーパーソンがいます。まずは、二人の経歴を表で見てみましょう。
| 項目 | CEO 尾上剛さん | CTO 若狭政啓さん |
|---|---|---|
| 学歴 | 早稲田大学大学院 ファイナンス研究科修了 | 秋田工業高等専門学校 → 東京工業大学 → 同大学院修了 |
| 前職 | 大手証券会社(投資銀行部門)→ 上場企業・スタートアップで経営企画を統括 | 日揮株式会社(大手プラントエンジニアリング会社)クウェート建設現場駐在、プラント設計IT業務 |
| アジラ参画 | 2022年 | 2020年 |
| 現在の役職 | 代表取締役CEO(2024年4月就任) | 取締役CTO(2023年3月就任) |
| アジラでの歩み | 経営企画GM → 執行役員COO → 取締役COO → 代表取締役CEO | 行動認識AIの製品開発担当 → IVAソリューション事業部統括 → 執行役員CTO → 取締役CTO |
| 強みの領域 | 経営戦略・ファイナンス・事業拡大 | AI技術開発・プロダクト設計 |
金融畑の尾上さんがビジネスと経営戦略を、エンジニアリング畑の若狭さんが技術開発を。バックグラウンドがまったく異なる二人がそれぞれの強みを持ち寄ってアジラを牽引しています。
尾上さんは証券会社の投資銀行部門というビジネスの最前線にいた方が、AIスタートアップの経営者へ転身しています。若狭さんはクウェートのプラント建設現場という、まさに「現場のエンジニア」からAI開発者になったという異色の経歴です。どちらも、それまでのキャリアとはまったく違う世界に飛び込んでいます。
なお補足すると、アジラの創業者は木村大介さんという方で、2015年にベトナムの仲間たちとともに会社を立ち上げた方です。木村さんは現在「取締役Founder」という肩書きで会社に関わっています。尾上さんは途中から参画してCEOに就任した形ですが、それもまたスタートアップならではのダイナミックな経営体制の変化と言えます。
AI×防犯の未来——鉄道、介護、ロボット連携の可能性
アジラの技術が防犯カメラの枠を超えて広がっていく未来像について解説します。
すでに実用化されているものとしては、鉄道の駅での活用があります。先述のとおり、京急線や小田急線の駅では、乗客同士のトラブル検知だけでなく、白杖や車いすをお使いの方を検知して駅員に通知する仕組みが導入されています。
2026年4月には、介護・福祉施設向けのAI見守りシステム「asilla care」の提供も開始されました。これは既存の防犯カメラを活用して、転倒、徘徊、ふらつきなどをAIがリアルタイムで検知し、検知からおよそ1秒でスタッフへ通知するシステムです。夜勤帯や少人数体制でも入居者の安全を見守れる仕組みとして、介護現場の負担軽減が期待されています。
さらに、NTT東日本との共創も始まっています。NTT東日本のクラウド型防犯カメラ「ギガらくカメラ」にアジラの行動認識AIを組み合わせた「MIMAMORI AI」というクラウドサービスが提供されており、中小規模の施設でもAI防犯カメラを導入しやすい環境が整いつつあります。
番組ではこのほか、ロボットやスピーカーとの連携による「人を介さないトラブル抑止」の可能性にも触れていました。尾上さんは取材の中で「ロボットにAIを搭載してカメラの映像を判定させるという世界は必ず到来する」と語っており、すでにロボット企業との連携も始まっているそうです。
防犯カメラの進化は「録画する道具」から「異常に気づく仕組み」へ、そして「人を助ける社会インフラ」へ。アジラの挑戦は、まだまだこれからが本番のようです。

介護施設での見守りシステムの話は、将来自分も関係してきそう。もし自分の親が施設にいて、夜中に転倒しても誰も気づけないかもしれなかったら怖いですね。こういう技術が当たり前になってほしいと心から思います。
まとめ:「録画するだけ」の時代は終わる
今回の「アンパラレルド」を通じて、防犯カメラに対するイメージが大きく変わりそうです。
従来の防犯カメラは映像を記録するだけの装置であり、異常に気づくのは人間の仕事でした。しかしアジラの姿勢推定AI・行動認識AIは、カメラ映像から人間の骨格の動きをリアルタイムで解析し、ケンカ、転倒、不審行動などを数秒で自動検知してアラートを出します。防犯カメラの役割が「事後の証拠」から「リアルタイムの検知と抑止」へと根本的に変わりつつあるのです。
そしてこの技術は、警備の現場だけにとどまりません。鉄道の駅でのバリアフリー支援、介護施設での見守り、ロボットとの連携——社会のさまざまな場面で、人の安全を静かに支える存在になろうとしています。
この記事を読んでくださった方も、次にマンションやお店で防犯カメラを見かけたとき、ちょっと立ち止まって考えてみてください。「このカメラは、ちゃんと”見て”くれているのかな?」と。その問いの先に、アジラが目指す未来があるのだと思います。


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