福岡・天神エリアに夜になると現れるフレンチ屋台「レミさんち」。福岡市内で営業する約100軒の屋台の中でも、とりわけ行列が絶えないお店として知られています。オーナーはフランス・ノルマンディ出身のレミさん。陽気な人柄と手頃な価格で楽しめる本格フレンチが人気を呼び、地元の人だけでなく、全国から「レミさんに会いたい」とお客さんが訪れています。
ところが、この「レミさんち」には営業の期限があります。福岡市の屋台公募制度により、2027年4月で営業を終えることが決まっているのです。
「あのお店、なくなるの?」――そんな声を耳にして、気になっている方も多いのではないでしょうか。閉店の話は本当なのか、なぜこれほど人気があるのか。「レミさんち」の魅力を、たっぷりお伝えしていきます。
そもそも「レミさんち」ってどんなお店?
「レミさんち」は、福岡市中央区渡辺通、天神ロフトの目の前にあるフレンチ屋台です。赤い三角屋根のかわいらしい外観はひときわ目を引き、通りかかればすぐに「あ、ここだ」とわかります。

沢山ある屋台のなかで、ひときわ目立つ屋台だよね。いつも人がいっぱい!
オーナーのレミさんは福岡で唯一の外国人屋台オーナー。スタッフもフランス人で構成されており、屋台の中からフランス語と博多弁が飛び交うという、なんとも不思議で楽しい空間が広がっています。
| 店名 | レミさんち(Chez Remy) |
|---|---|
| 住所 | 〒810-0004 福岡県福岡市中央区渡辺通4-9(天神ロフト前) |
| アクセス | 西鉄福岡(天神)駅 南口 徒歩約1分 地下鉄七隈線 天神南駅 徒歩約2分 |
| 営業時間 | 火〜土 18:00〜24:00(L.O.) |
| 定休日 | 日曜・月曜・悪天候時等 |
| 電話番号 | 092-986-2117(予約不可) |
| 席数 | 12席(カウンターのみ) |
| 支払い方法 | QRコード決済対応(PayPay/楽天ペイ/au PAY) |
| @yataichezremy |
営業は火曜日から土曜日の18時〜24時(ラストオーダー)。日曜・月曜と悪天候の日はお休みです。座席はカウンターの12席のみで、1組45分の時間制。開店前から行列ができることも珍しくなく、並んでいる間にスタッフが注文を聞きに来てくれるため、着席するとすぐに料理が提供されるという、なんとも手際のよいシステムになっています。
閉店の噂は本当?2027年4月に営業終了が決まっている理由
福岡市の屋台公募制度とは
「レミさんち」の閉店の話をする前に、福岡市の屋台公募制度について少し触れておきます。
かつて福岡の屋台は世襲的に営業権が引き継がれるのが慣習で、新しく屋台を始めたいと思っても、なかなか参入できない仕組みでした。そこで福岡市は屋台基本条例を制定し、公募によって新たな屋台営業者を選ぶ制度を導入しました。
公募で選ばれた屋台の営業期間は、まず3年。その後、営業状況の審査を経て2年延長、さらに5年目の審査でもう5年延長が可能で、最長10年間営業できる仕組みです。裏を返せば、どれだけ人気のあるお店でも、10年を超えて同じ場所で営業し続けることはできません。
残された営業期間はあと約1年
「レミさんち」は2017年4月に第1回の公募で選ばれてオープンしました。つまり、最長10年の営業期間を迎える2027年4月が、このお店の区切りとなります。
SNSやニュースでこの事実が広まり、「閉店前にもう一度行きたい」「今のうちに行っておかなきゃ」という声が増えています。実際に、閉店を知って駆けつけるお客さんが増えているという話もあります。もしまだ行ったことがない方は、早めに計画を立てておくのがよさそうです。
フランス人シェフ・レミさんが福岡で屋台を始めたきっかけ
旅行で訪れた福岡の屋台で受けた衝撃
レミさんは1976年、フランス・ノルマンディ生まれ。子どもの頃に囲碁に興味を持ったことをきっかけに日本への関心が芽生えたそうです。
初めて日本を訪れたのは1999年、23歳のとき。3か月かけて九州から北海道まで旅する計画を立て、明太子が好きだったという理由で最初の滞在地に福岡を選びました。当初の福岡滞在はわずか3日間の予定でしたが、最終日に訪れた屋台でその人生が大きく変わることになります。
その日はちょうど、福岡ダイエーホークス(現・福岡ソフトバンクホークス)が球団創設11年目にして初のリーグ優勝を果たした日。屋台ではお客さん同士が肩を組んで大騒ぎし、言葉もわからないレミさんまで祝勝会の輪に巻き込まれ、朝まで飲み明かしたそうです。

博多の人って、人懐っこいですよね。「よかと~」っていう博多弁がまたかわいいんです。
レミさんはこの熱気に、前年の1998年にフランスで開催されたサッカーワールドカップでフランスが初優勝したときの熱狂と同じ”風土”を感じたといいます。「日本に住むなら福岡だ」と直感した瞬間でした。結局、3日間の予定だった福岡滞在はそのまま3か月に延び、日本一周の旅は実現しないまま帰国することになりました。
福岡に移住、大病を乗り越え、たどり着いた屋台という夢
2001年、福岡への移住を果たしたレミさんは、市内のベーカリーやチョコレート専門店、カフェ、バーなど複数の飲食店をかけ持ちしながら経験を積みました。昼も夜も深夜も働く日々を送りながら、「いつか自分のお店を持ちたい」という目標に向かって一歩ずつ進んでいったそうです。
その後、日本人の奥様と結婚。仕事も家庭も順調で、まさに幸せの絶頂にいたそのとき、体調不良が続くようになります。検査を受けた結果、告げられたのはステージ4のガンでした。
最も重い段階のガンという宣告は、どれほどの衝撃だったか想像もつきません。しかしレミさんは、そこで立ち止まりませんでした。BSテレ東の番組「ワタシが日本に住む理由」では、「自分らしく全力で闘った」と紹介されています。そして見事に病を克服し、再びキッチンに立つことができるまでに回復しました。
大きな病気を経験したからこそ、「やりたいことを先延ばしにしない」という思いがより一層強くなったのかもしれません。2011年、福岡市南区井尻にフレンチ居酒屋「メルシー博多」をオープン。オーナーシェフとして腕を振るっていたところに、福岡市が屋台の営業者を公募するという情報が飛び込んできます。かつて旅行者として心を震わされたあの屋台文化の一員になれるかもしれない。外国人にとってハードルの高い日本語での書類作成にも挑戦し、熱意を込めたプレゼンで見事合格。2017年4月、福岡初の外国人屋台オーナーとして「レミさんち」をオープンさせました。

福岡市の公募制度は、いろんな人にチャンスを与えてくれるところがいいね!
さすが、高島市長です。
ステージ4のガンを乗り越え、言葉の壁を越え、前例のない公募に挑み、夢をかなえたレミさん。その道のりを知ると、毎晩カウンターに立ち続けるレミさんの笑顔が、ますます特別なものに見えてきます。
開店前から20人の行列!レミさんの人柄が愛される理由
博多弁を操る陽気なコミュニケーション力
「レミさんち」の最大の魅力は、料理だけではなく、レミさんその人だと多くのお客さんが口をそろえます。
レミさんは日本語、それも博多弁がペラペラ。カウンター12席を見渡しながら、一人ひとりのお客さんに気さくに話しかけ、笑わせ、場をあたためていきます。カメラを向ければひょうきんな表情を見せてくれるし、料理の説明も楽しそうに語ってくれる。その場にいるだけでこちらまで元気になるような、不思議なパワーを持った方です。
口コミサイトやSNSを見ると、「レミさんの人柄に惚れた」「45分があっという間だった」「待ち時間すら楽しかった」という声がとても多いことに気づきます。食べログの予算帯は2,000〜3,000円程度ですが、この価格でこれだけ楽しい時間を過ごせるお店はなかなかありません。
お客さん同士をつなぐ”屋台の主人”としての存在感
レミさん自身、「レミさんち」のコンセプトは「一期一会」だと語っています。観光客と地元の人がカウンター越しに自然と会話が生まれ、気がつけば隣同士で乾杯している――そんな光景が毎晩繰り広げられています。
レミさんは積極的にお客さん同士をつなぐ役割を果たしていて、「観光客と地元の人たちとの交流を見るのが楽しみ」と話しています。口コミでも「お客さん同士すぐ仲良くなれた」「日本にいながら海外旅行を味わえるような特別な空間だった」という感想が寄せられています。お店を出るときには、隣に座った見知らぬ人と連絡先を交換している……なんてこともあるそうです。
「生まれたところたまたま、住むところわざわざ」
レミさんの有名な言葉に、「生まれたところたまたま、住むところわざわざ」というものがあります。フランスに生まれたのは偶然だけれど、福岡に住むことは自分で選んだのだ、という意味です。
地元の人以上に福岡を愛し、屋台を通じて福岡のファンを一人でも増やしたいという思い。その真っすぐな姿勢が、レミさんの言葉や接客のすみずみから伝わってきます。お客さんを福岡の街や郊外に案内することもあるそうで、冬には糸島の牡蠣小屋に連れて行くこともあるのだとか。屋台という枠を超えて、福岡という街ごと好きになってもらおうとしているところが、レミさんらしさなのだと思います。
これだけは食べてほしい!「レミさんち」の人気メニュー5選
「レミさんち」のメニューは、フランスの家庭料理をベースにした手作りの品々。レミさんが「ビールやワイン片手にワイワイ楽しめるような庶民的な料理を」と心がけているとおり、肩肘張らずに楽しめるものばかりです。ここでは、特に人気の高い5品をご紹介します。
※価格は変更される場合があります。最新の情報はお店でご確認ください。
看板メニュー「絶品!エスカルゴ」(770円)
「レミさんち」に来たらまずこれ、という声が多い看板メニューです。大きくて柔らかいエスカルゴに、ニンニクバターソースがたっぷり。レミさんは「香り」にこだわっていて、生のニンニクをふんだんに使い、パセリは注文が入ってから刻むことで香りを最大限に引き出しているそうです。提供されるときにはソースがぐつぐつと音を立てていて、その匂いだけでもう幸せな気持ちになります。熱々なので少しだけ冷ましてから食べるのがおすすめです。
日替わりが楽しい「本日のキッシュ」(550円)
日によって具材が変わる手作りキッシュも人気の一品です。季節の野菜がたっぷり入っていて、自然な甘みが感じられるやさしい味わい。ナイフとフォークで切り分けるときのサクサクした感触が心地よく、目にも楽しい鮮やかな断面が食欲をそそります。レミさんいわく「キッシュは女性に人気!」とのこと。550円という価格もうれしいポイントです。
外パリパリ中とろとろ「フランス風とろけるとん足」(440円)
「とん足がフレンチ?」と驚く方もいるかもしれませんが、これがまた絶品です。野菜たっぷりの出汁で長時間じっくり煮込んだ後、フライパンで表面をカリカリに焼き上げているため、外はパリパリ、中はとろけるように柔らかい。さっぱりとした味付けで、添えられた粒マスタードとの相性も抜群です。骨まで柔らかく、噛むと旨味がじわっと広がります。440円でこの満足感は本当にありがたいと思います。
ワインが進む「ぷりぷりエビのアヒージョ」(660円)
その名のとおり、大きくてぷりぷりのエビが入ったアヒージョ。特製のにんにくオイルが香ばしく、ついお酒が進んでしまいます。残ったオイルはぜひ「ガーリックトースト」(330円)や「焼きたてパン」に浸して味わってください。オイルまで残さず楽しめるのが、このメニューの醍醐味です。
ほっとする味わい「かぼちゃのニョッキ」(660円)
あつあつの鉄鍋で提供されるニョッキは、コクのあるホワイトソースとかぼちゃの自然な甘みが溶け合って、どこか懐かしい味わいがします。寒い季節はもちろん、夜風に当たりながらの屋台で食べるとひときわ心があたたまる一品。「これを食べるためだけにまた来たい」というリピーターもいるほどです。
初めて行く人のための完全ガイド【場所・予算・並び方のコツ】
アクセス・営業時間・定休日
「レミさんち」は西鉄福岡(天神)駅南口から徒歩約1分、地下鉄七隈線天神南駅から徒歩約2分という好立地にあります。天神ロフトの目の前なので、場所はとてもわかりやすいです。
営業時間は火曜〜土曜の18:00〜24:00(ラストオーダー)。日曜・月曜は定休日で、悪天候時も営業が中止になることがあります。祝日は営業していることもありますが、お出かけ前にInstagram(@yataichezremy)で最新情報を確認しておくと安心です。
なお、予約はできません。
予算の目安は2人で4,000円〜5,000円
食べログの口コミによると、一人あたりの予算は2,000〜3,000円程度。2人で訪れてフード5〜6品とドリンク2杯ずつを楽しんでも、4,000〜5,000円ほどで収まることが多いようです。屋台で本格フレンチを味わってこの価格帯というのは、かなりお得だと思います。
ハウスワインは赤・白ともにグラスで用意されていて、スパークリングワインや生ビールもあります。支払いはPayPay、楽天ペイ、au PAYなどのQRコード決済に対応しています。
並ぶ前に知っておきたい3つのポイント
「レミさんち」を最大限に楽しむために、初めて行く方にぜひ知っておいてほしいことが3つあります。
✔ 開店前に並ぶのがおすすめだということです。平日でも開店後すぐに満席になることが多く、18時前から待っている方もいます。特に金曜・土曜は混み合いますので、早めに到着しておくと安心です。
✔並んでいる間に注文を決めておけるということ。列に並んでいるとスタッフが注文を聞きに来てくれて、席に着くころには料理が仕上がっているというシステムです。あらかじめ食べたいメニューの目星をつけておくと、スムーズに注文できます。
✔ 1組45分の時間制であること。人気店ゆえの制限ですが、事前にメニューを決めておけば45分でも十分に楽しめます。むしろ、限られた時間だからこそ「何を食べよう」と真剣に選ぶ楽しさがあります。食べたいものを2〜3品に絞っておいて、余裕があれば追加する、というのがおすすめの楽しみ方です
まとめ|閉店前に一度は訪れたい、福岡が誇る唯一無二の屋台
手頃な価格の本格フレンチ、お客さん同士が自然とつながる温かい空気、そして何より、レミさんという人の魅力。「レミさんち」は、この3つが重なり合って生まれた、福岡でしか味わえない特別な場所です。
2027年4月の営業終了まで、残された時間はあと1年ほど。「いつか行きたい」と思っている方は、ぜひその「いつか」を近いうちの予定に変えてみてください。天神の夜風に当たりながら、レミさんの陽気なトークを聞いて、ワインを片手に絶品エスカルゴをほおばる――きっと、「来てよかった」と思える夜になるはずです。


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