【アンパラレルド】スマホ充電2週間に1回でモバ充不要?東北大学発パワースピンの技術で可能に?

ライフハック

2026年5月20日(水)23:06放送のテレビ東京「アンパラレルド〜ニッポン発、世界へ〜」で、東北大学発スタートアップ「パワースピン」が特集されます。

テーマは「スマホの充電は2週間に1回でOK!?」。これは衝撃ではないですか?本当に実現できれば、モバ充(モバイルバッテリー)を持ち歩かなくて済みます。外出先でひやひやすることもなくなります。

果たして、その技術とは?バッテリーを大きくするのではなく、半導体そのものの仕組みを根本から変えてしまうというなの発想です。番組では、1987年に東芝に同期入社した二人の研究者が50代半ばで起業するまでのストーリーや、トヨタグループのアイシンと共同開発した超高速起動の車載AIカメラの実例など、技術の「実力」が次々と紹介される予定です。

充電が2週間に1回で済むって、本当にありえるの?その仕組みと、私たちの生活がどう変わるのかを、できるだけわかりやすくまとめました。

スマホの充電、毎日のことだからこそ地味にしんどい

朝、出かける前にスマホが100%なのを見てひと安心。でも夕方にはもう30%台で、子どものお迎えの帰り道にマップを開くか迷う。カフェに入ればまずコンセント席を探し、家族のお出かけにはモバイルバッテリーと充電ケーブルが必須の持ち物に。

ある調査では、スマホのバッテリー残量が38%を下回ると不安を感じるという結果も出ています。モバイルバッテリーを所有している人は5割以上、外出時に持ち歩いている人は約36%(クロス・マーケティング調べ、2025年)。スマホの充電問題は、毎日繰り返されるからこそ積み重なる、見えないストレスです。

SNSや動画視聴、さらに最近ではChatGPTのような生成AIを使う機会も増えて、スマホの電力消費は年々増える一方。「一日一回の充電じゃ足りない」という人も珍しくありません。

もし充電が2週間に1回で済むなら、モバイルバッテリーも、寝る前の充電忘れの心配も、外出先でコンセントを探す行動も、ぜんぶ過去のものになります。そんな未来を本気で目指しているのが、今回の番組で紹介される「パワースピン」です。

『パワースピン』とは? 基本情報

項目内容
会社名パワースピン株式会社(Power Spin Inc.)
設立2018年10月24日
所在地本社:宮城県仙台市青葉区(東北大学内)/横浜事務所:横浜市西区みなとみらい
代表者CEO 福田 悦生/COO 遠藤 哲郎(共に1987年東芝同期入社)
資本金1億円(2024年4月現在)
累計資金調達額約35.5億円(主な出資元:東北大学ベンチャーパートナーズ、ジャフコ グループ、三菱UFJキャピタル等)
出自東北大学発スタートアップ
コア技術スピントロニクス省電力半導体(CMOS+MRAM融合)
技術の強み消費電力を従来比1/100〜1/1000に削減、起動時間を約1/30に短縮(約65.7ms)、電源オフでもデータ保持
事業内容省電力半導体の設計・試作、IP・PDKライセンス、コンサルティング
量産パートナー台湾PSMC(力積電)と提携、2029年量産開始を目標
主な認定・受賞J-Startup選定(2023年)、NEDO省エネルギー技術開発賞(2024年)
公式サイトhttps://powerspin.co.jp/

5月20日の放送ではパワースピンについて大きく3つのことが語られるようです。

まず、パワースピンが開発する「スピントロニクス省電力半導体」の技術。番組では「電気の性質と磁気の性質を融合させた究極の”いいとこ取り”技術」と表現されています。次に、トヨタグループのアイシンと共同開発した超高速起動の車載カメラなど、すでに形になりつつある実例。そして、1980年代に東芝に同期入社した2人が50代半ばで起業した創業のドラマ。

さらに、味の素が半導体用の絶縁材料で世界シェア95%を握っているという話にも触れながら、日本企業の底力を俯瞰する内容になるようです。

スタジオでは「今のスマホを1回充電すれば、性能を10倍に上げても2週間は持つ」という驚きの未来像が語られるとのこと。これがどういう仕組みなのか、もう少し詳しく見ていきましょう。

そもそも、なぜスマホの電池はこんなに減るの?

パワースピンの技術を理解するには、まず「今のスマホの半導体がなぜこんなに電気を食うのか」を知っておくと、話がスッと入ってきます。

スマホの中にある半導体(メモリ)には、ちょっと困った性質があります。電気を流し続けていないと、覚えているデータが全部消えてしまうのです。こういうメモリを「揮発性メモリ」と呼びます。

イメージしやすいのは「ジャグリング」です。ボールを空中に投げ続けないと落ちてしまうように、電気を止めた瞬間にデータがゼロになる。だからスマホはポケットの中で何も操作されていなくても、半導体がずっと電気を使って「記憶のジャグリング」を続けています。

もうひとつ、もったいない話があります。スマホのCPUは1秒間に数十億回もの処理ができる能力を持っています。でも、人間の目が反応できるスピードはせいぜい1秒間に数百回程度。ということは、スマホの頭脳は99%以上の時間、何もしていないのに電気を使っている状態なのです。

遠藤教授はこれを「使っていない部屋の電気もぜんぶつけっぱなしにしている状態」と表現しています。家の中で誰もいないリビングもキッチンもトイレも、24時間ずっと照明がついている。毎月の電気代を考えたらぞっとしますよね。今のスマホの半導体は、まさにそういう状態で動いているのです。

パワースピンの技術は何が違うの? ― 超省エネ半導体の実力

ここからが本題です。パワースピンが手がける「スピントロニクス省電力半導体」は、今の半導体のどこを変えるのか。ポイントを3つに分けて説明します。

ポイント1:磁石の力で覚えるから、電気を切っても忘れない

従来の半導体が電気の力でデータを覚えるのに対して、パワースピンの半導体は磁石の力(正確には電子が持つ「スピン」という磁気の性質)でデータを記憶します。

冷蔵庫にマグネットでメモを貼るのをイメージしてみてください。冷蔵庫のコンセントを抜いても、マグネットは剥がれませんよね。同じように、この半導体は電源を切ってもデータが消えません。

先ほどの「ジャグリング」に対して、こちらは「本棚に本を置く」ようなもの。本棚の本は、電気代を払わなくてもずっとそこにあります。この「電源を切っても記憶が消えない」という性質を「不揮発性」と呼び、この技術を使ったメモリが「MRAM(エムラム)」です。

ポイント2:使わないときは完全にオフ、でも一瞬で目が覚める

データが消えないということは、使っていない回路の電源を遠慮なくオフにできるということ。さっきの家の例えでいえば、使う部屋だけ電気をつけて、誰もいない部屋は消す。しかも誰かが部屋に入った瞬間にパッと電気がつく。

この「一瞬で復帰する」性能が実際にどのくらいかというと、東北大学とアイシンが共同開発した実証チップでは、電源を入れてからAIが処理を完了するまでわずか65.7ミリ秒。従来のチップは同じことに約2535ミリ秒かかっていたので、約30分の1の速さです(2025年7月、東北大学プレスリリース)。

ちなみにまばたき1回が約300ミリ秒。つまりまばたきするより速く、電源オンから仕事が完了しているという計算になります。

この「必要なときだけ起きて、終わったら即座に寝る」という使い方を、専門家は「ノーマリーオフ・コンピューティング」と呼んでいます。家電でいえば、テレビの待機電力がゼロになるようなもの。それがスマホの中の半導体すべてで実現すると考えると、消費電力が激減するのも納得です。

ポイント3:チップが小さくなるから、安くもなる

もうひとつ大きな特長があります。従来の半導体は「計算する場所」と「記憶する場所」が同じ平面上に横並びに配置されていました。広い机の上に教科書とノートを広げているようなものです。

MRAMは金属の材料でできているため、計算する回路の「真上」に重ねることができます。平屋から2階建てにするイメージです。すると同じ面積でもっと多くの機能を詰め込めるので、チップが小さくなります。

チップが小さくなると、1枚のシリコンウェハーから取れるチップの数が増えるので、1個あたりの製造コストも下がります。さらにデータが移動する距離も短くなるので、消費電力も下がる。つまり小さい・安い・省エネが全部同時に実現するわけです。

遠藤教授によると、AIプロセッサ単体では消費電力を1000分の1に削減したデモ実績があり、システム全体でも100分の1を目指しているそうです。

2週間に一度の充電は本当に実現するの?

ここが気になるところだと思います。「2週間に1回の充電」は本当に現実になるのか。期待と現実の両面をお伝えします。

まず、すでに成果が出ている領域があります。遠藤教授によると、Googleのスマートウォッチ「Fitbit」にはスピントロニクスの技術が搭載されており、バッテリーの持続時間が飛躍的に向上しているそうです。スマートウォッチという小さなデバイスでは、「もう実際に動いている」段階です。

一方で、スマホとなるともう少しハードルがあります。遠藤教授自身も「半導体は社会インフラだから、信頼性の検証に通常8〜10年かかる」と率直に語っています。技術がいいからといって、すぐに世の中に出回るわけではない。ここは正直なところです。

ただし、「いつかそのうち」という曖昧な段階はすでに過ぎています。具体的な動きとして、2024年にパワースピンは台湾の半導体大手PSMC(力晶積成電子製造)提携し、2029年のMRAM量産開始を目指しています。

加えて、パワースピンは2023年に経済産業省のスタートアップ支援プログラム「J-Startup」に選ばれ、同年にはジャフコグループ、三菱UFJキャピタルなどから総額25億円の大型資金調達にも成功しています。技術力だけでなく、事業としての将来性をプロの投資家たちが認めている証拠です。

スマホの先にある、もっと大きな話

充電が楽になるのは嬉しいことですが、この技術のインパクトはスマホだけにとどまりません。番組でも触れられるようですが、もう少し掘り下げてみます。

災害時に命をつなぐ。遠藤教授がこの技術に人生を懸けるきっかけのひとつが、東日本大震災でした。被災時にスマホのバッテリーが次々と切れて、家族や学生の安否確認ができなかった。その経験から「少ないエネルギーでやるべきことをやれる技術がないと、社会インフラとして使い物にならない」と痛感したそうです。充電が2週間持つスマホがあれば、停電が長引く避難生活でも連絡手段を失わずに済みます。南海トラフ地震への備えが叫ばれる今、この視点はとても身近に感じます。

車の安全と省エネが両立する。番組で紹介されるアイシンとの共同開発は、まさにこの領域です。これからの車は自動運転や安全システムのために大量のAI処理をこなす必要がありますが、バッテリーには限りがあります。信号待ちのときにAIチップの電源を完全にオフにして、アクセルを踏んだ瞬間に0.1秒以下で復帰できれば、電力を節約しながら安全性も確保できます。電気自動車の航続距離を伸ばすことにもつながります。

地球のエネルギー問題を解決する鍵になる。米国SRC(半導体研究連合)の試算によると、AIとデータセンターの電力消費が今のペースで増え続ければ、2045年頃には世界全体のエネルギーをすべてつぎ込んでも足りなくなる可能性があるそうです。遠藤教授は「AIが栄えて人が滅ぶ、そんなことはあり得ない。だから半導体の消費電力を100分の1に下げなければならない」と語っています。パワースピンの技術は、スマホの便利さを超えて、地球規模の課題に応える可能性を持っています。

50代で起業した福田さんと遠藤さんは「東芝の同期コンビ」

番組のもうひとつの見どころが、パワースピンを率いる2人の物語です。

創業者 福田悦生・遠藤哲郎さんのプロフィール

項目CEO 福田 悦生(ふくだ えつお)COO 遠藤 哲郎(えんどう てつろう)
生年・出身1961年 群馬県生まれ1962年 東京生まれ
最終学歴東京工業大学大学院修了/東北大学にて博士(工学)取得(2018年)東京大学理学部卒/東北大学にて博士(工学)取得(1995年)
東芝入社1987年 ULSI研究所1987年 入社(NANDメモリの研究開発)
東芝での実績半導体工場のIT化システムの基礎を構築。社内スタートアップ「セミコンダクタポータル」を立上げ、技術者から経営者へ転身3D NANDメモリの基本特許を発明。東芝の主力事業の基盤技術を生み出す
転機2014年ハワイの学会で遠藤氏と約20年ぶりに再会1995年に東北大学へ移籍し、スピントロニクス研究に注力
現在の兼務東北大学大学院工学研究科 教授、国際集積エレクトロニクス研究開発センター(CIES)センター長
主な受賞・実績IPO2社達成(ティアンドエス2020年上場)2016年 内閣総理大臣賞(スピントロニクス省電力半導体)、2017年 全国発明賞(3D NANDメモリ)、2023年 IEEE Fellow
パワースピン2018年共同創業 → 2022年 代表取締役社長&CEO就任2018年共同創業 → 代表取締役&COO就任

CEO福田悦生さんとCOO遠藤哲郎さんは、1987年に東芝ULSI研究所に同期入社しました。福田さんは1961年群馬県生まれで東京工業大学大学院修了、遠藤さんは1962年東京生まれで東京大学理学部卒。同じ半導体の研究所で、同じ時代を過ごした仲間です。

遠藤さんは当時、まだ日の目を見ていなかったNAND型フラッシュメモリ(今のUSBメモリやSSDの原型)の開発チームに配属され、後にスキー場のリフトから高層ビルを眺めていてひらめいたという3D NANDの基本特許を書き上げた人物。この技術が現在のキオクシアの事業の土台になっています。2017年には全国発明表彰を受賞し、2016年にはスピントロニクスの研究で内閣総理大臣賞も受けています。

一方の福田さんは、研究開発から経営の道に進み、社内スタートアップの立ち上げやIPO(株式公開)を2社で実現させた経営のプロフェッショナルです。

別々のキャリアを歩んだ2人は、2014年にハワイの学会で約20年ぶりに再会。遠藤さんが東北大学で世界最先端に育てていたスピントロニクスの技術を目の当たりにした福田さんは、「これは世界を変えられる」と確信したそうです。福田さんは事業化のために東北大学へ移籍し、2018年にパワースピンを共同創業。遠藤さん56歳、福田さん57歳のスタートでした。

成果を出すチームの共通点として、「お互いの凸凹(デコボコ)が見事に噛み合っている」という点が挙げられます。共同代表である遠藤氏と福田氏の関係性は、まさにその理想形です。

遠藤氏の言葉からは、その絶妙な補完関係がリアルに伝わってきます。

「彼は典型的なA型で、そつなく全方位に物事をこなす。僕は典型的B型で、興味があるとどこまでも突っ走る。共同代表だとぶつかりませんかとよく言われるが、ぶつかりようがないくらいキャラクターが違う。大体僕が勝手に走っていくのを、福田さんが全部拾ってくれる」

一般的に「似た者同士」の方が居心地は良いものですが、ビジネスにおいて爆発力を生むのは、むしろこのように「全く違う性質」を持ったパートナーシップかもしれません。遠藤氏の突破力と、福田氏の網羅的なサポート力。正反対だからこそ、ぶつかることなく互いの弱点を補い合えるのですね。「いい技術が売れるのではなく、求められている技術が売れる」。東芝時代にDRAM事業の敗退を間近で見てきた2人だからこそ持つ、技術への情熱と市場を見る冷静さ。その両方が、この会社の強さの源泉になっています。

おわりに ― 「充電したっけ?」がなくなる?

「スマホの充電が2週間に1回」。その秘密は、バッテリーが大きくなることではなく、半導体の記憶の仕組みが根本から変わること。磁石の力で情報を覚え、使わないときは電源を完全にオフにし、必要なときだけまばたきより速く起動する。

スマートウォッチではすでに成果が出ていて、2029年には量産工場が稼働する計画。台湾の半導体大手やトヨタグループとの連携、25億円の資金調達、国の支援プログラムへの選定と、実現のためのピースが一つずつ揃ってきています。

モバイルバッテリーの重さや、出かける前の「充電したっけ?」という小さな不安。そんな毎日の当たり前が変わる日は、思ったより近いのかもしれません。

5月20日の放送で、若林さんがこの技術にどんなツッコミを入れるのかも楽しみなところ。番組を見る前にこの記事を読んでおくと、技術の話がスッと頭に入ってくるはずです。

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